学校をプラットフォームにした包括的な若者支援-多様な困難を有する高校生のキャリア支援を通して考える-

2018年8月8日 00時33分 | カテゴリー: 活動報告

8月6日、新しい生き方・働き方研究会主催の「学校をプラットフォームにした包括的な若者支援―多様な困難を有する高校生のキャリア支援を通して考える―」と題した学習会に参加しました。

 講師は、一般財団法人 神奈川教育会館教育研究所 特別研究員 東洋大学非常勤講師 元県立田奈高校教員の金澤信之さんです。田奈高校での実践を伺いました。    神奈川の高校教育をめぐる状況では、2012年の「緊急財政対策本部調査会」(本部長:黒岩知事)で、教育の在り方、人件費の抑制が優先的に検討され、厳しい財政環境の中にあって、教育費のみを聖域扱いすることは妥当ではないとされました。公立高等学校を維持するより、私学助成に回す方が行財政運営上は県費負担が軽減されると考えられ、生徒を私学に回す政策が取られました。2013年の「神奈川の教育を考える調査会」の報告では、(公立は)経済的な理由により就学が困難な状況の生徒や学習状況に課題のある生徒、支援が必要な障害のある生徒などの受け入れを強化するとあります。2015年には、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正され、「神奈川県総合教育会議」が黒岩知事によって設置され、「かながわ教育大綱」が策定されました。それまでの教育委員会の力はそがれ、政治の中に教育がのみ込まれていきます。  

  一方国は、2009年に子ども・若者育成支援推進法で「子ども・若者支援地域協議会」の設置を努めるとし、この対象者には「修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者」である若年無業者(いわゆるニート)やひきこもりだけではなく、「就業や修学状態にありながらも社会生活を円滑に営む上での困難を有するものも含まれる」としました。  

  2013年には、子どもの貧困対策の推進に関する法律、翌年2014年には子どもの貧困対策に関する大綱ができ、「教育の支援においては学校を子どもの貧困対策のプラットフォームと位置づけ、①学校教育による学力保障、②学校を窓口とした福祉関連機関との連携、③経済的支援を通じて、学校から子どもを福祉的支援につなげ、総合的に対策を推進するとともに、教育の機会均等を保障するため、教育費負担の軽減を図る」としました。しかし、学校には専門職もいなければ、教員は多忙、意識改革の面でも難しいものがありました。

 教育現場では重複の困難を有する子どもが増えており、目の前に困難を抱える子供がいるから何とかしなければと、県立田奈高校では、2010年キャリア支援センターを設置、2011年から本格稼働します。卒業後につながる仕組みを考え、横浜市青少年育成課、港北ハローワーク、放送大学教授 宮本みち子氏、神奈川県労働局・教育局など、外部人材、外部資源を活用した従来にはない支援の仕組みを作ります。中退者、卒業生も支援の対象です。子どもの困難を早期発見し福祉と労働、医療の連携で支援します。金澤さんは、この支援で何人かは人生が変わるほど劇的に変化したとおっしゃいます。

  子どもの貧困率は13.9%(2015年)、特にひとり親家庭の貧困率は高く、50.6%(2015年)と半数を超えています。家庭の経済事情は子どもの進学に大きく影響します。家計所得が高いほど、4年制大学への進学が増え、どのような学校段階に進んだかが卒業後の就職状態や所得に影響を与えます。教育の機会均等は保障されておらず、貧困の連鎖が続きます。

 高卒当たり前社会ですが、高等教育改革をしながら、中退は増えているのが現状です。規約や社会のしめつけが以前より厳しくなり中退が増えているのではないかといわれています。中退すると中卒の資格となり、就職も厳しくなるので、高校新卒で就職させてあげた方がいいとのお話でした。

  また頑張って奨学金で大学へ行くというのも、現状の給付型奨学金ではとても足りず、奨学金を借りても卒業後に就職できなければ、私立文系の場合400万円借りて20年で600万円も返せるのかということになります。経済的に潰れずにいくことがまずは大事で、勉強したくなったら大学へ行けばいいと助言されているとのことでした。

 困難を抱えた子どもにとっては、高校は最後の砦です。この課題を相談する所がなければ社会的な排除に繋がります。「学校には何でも相談できる先生がいる」という日・米・中・韓の高校生へのアンケートでは日本が一番低い調査結果でした。学校が生徒の排除に向かわず、教師と生徒の信頼関係を作り、卒業後(中退後)も視野に入れた支援、学校だけでは足りない所は外部機関と連携をし、新たな支援の仕組みを作っていく必要があるとおっしゃいます。

 一人ひとりの目の前の課題に寄り添ったこの支援の実践を、子ども、若者支援の政策に活かしていきます。