ヘイトスピーチ被害の実態と自治体取組みの必要性を学ぶ

2018年9月2日 23時27分 | カテゴリー: 活動報告

 8月30日、「ヘイトスピーチ被害の実態と自治体取り組みの必要性を学ぶ」学習会が開催されました。講師は、ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク事務局の山田貴夫さん。 

 ヘイトスピーチに対しては、これまで2014年大阪高裁判決で「公共の福祉に反し、表現の自由の濫用で法的保護に値しない」(最高裁への上告棄却で確定)との司法の判断、2015年法務省が、朝鮮大学校前におけるヘイトスピーチを人権侵害に当たると認定、同様の行動を起こさないように勧告(行政の判断)、2016年1月大阪市がヘイトスピーチ条例制定(自治体判断)、2016年4月高松高裁が徳島県教組襲撃事件に人種差別撤廃条約上の差別に該当すると賠償命令(司法の判断)、2016年5月ヘイトスピーチ解消法可決成立(立法府判断)2016年6月ヘイトデモ禁止仮処分決定(横浜地裁川崎支部)2016年8月法務省人権擁護局、崔さんらの人権侵害を認定という判断がなされています。

 川崎市においては、2013年から桜本に向うヘイトデモが繰り返し行われています。2015年3月、川崎市議会は「ヘイトスピーチを根絶するための対策を求める意見書」を国に提出します。12月には市民ネットワーク設立準備会議が開かれ、2016年1月には、ヘイトスピーチを許さないオールかわさき市民集会が開かれました。3月には川崎市議会が、「あらゆる差別の撤廃に向けた街づくりの推進に関する決議」を採択。川崎市は2016年7月人権施策推進協議会に「ヘイトスピーチ対策に関すること」を優先審議事項として諮問し、12月には人権施策推進協議会は川崎市長に「ヘイトスピーチ対策に関する提言を」提出しています。それには、①公的施設の利用に関するガイドラインの策定②インターネット上の対策③制定すべき条例の検討(多文化共生、人種差別撤廃などの人権全般にかかるもの)が挙げられています。 

 2016年3月に制定された「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(ヘイトスピーチ解消法)は戦後70年にして初めての差別禁止法ですが、問題点が多々あると言います。「差別的言動は許されない」と「差別的言動」に限定し、差別的待遇には言及していないこと、国内のマイノリティ、難民申請者、非正規滞在者を排除していること(付帯決議でフォローする)、「違法」や「禁止」の文言がないこと、実態の調査がなされていないこと、何がヘイトスピーチであるか審査、判定する機関、または取組みを推進する機関がないこと、ネット上のヘイトスピーチ対策もないことなどです。  

 川崎市では2017年11月「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく『公の施設』利用許可に関するガイドライン」を策定、公表し2018年3月に施行しました。4月には、人権施策推進協議会に「ヘイトスピーチに関する部会」を設置、ネットリサーチも実施しています。しかし、施設の利用不許可、許可取り消しには「差別的言動要件」かつ他の施設利用者への「迷惑要件」を付加したため、現実には事前規制は困難になっています。6月の市教育文化会館でのヘイト集会は、「ガイドラインの不許可の要件に該当せず」との市の判断のもと、開催されようとしまたが、当日の市民の抗議によって中止に追い込まれました。これを受け、市議会は市にガイドラインの適正運用と条例の早期制定を求める要望書を提出しました。

 山田さんは、ガイドラインの見直しでは、施設の利用不許可、許可取り消しは「差別的言動要件」かつ他の施設利用者への「迷惑要件」としているのを、京都府・市のように「差別的要件」または「迷惑要件」とすること、また条例については、実効性のある人種差別撤廃条例を制定すること、差別は犯罪であり、差別禁止、罰則のある条例をと仰います。 

 国際人権条約の人種差別撤廃条約第4条では、差別・扇動の禁止と処罰をうたい、国際人権規約(自由権規約20条)でも「差別、敵意または暴力の扇動となる国民的、人種的または宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する」とあります。

 人種差別撤廃委員会の日本への勧告では、人種差別禁止法をいまだ日本が制定していないことを懸念し、直接的、間接的な人権差別を禁止する包括的な特別法を採択するように勧告しています。ヘイトスピーチに対しても、捜査、起訴、制裁も挙げています。ヘイトスピーチは、人権原則の核心である人間の尊厳と平等を否定するものであること、表現の自由への権利は無制限ではなく、特別な義務と責任を伴い、他者の権利と自由を破壊するものであってはならないと言っています。

 川崎の在日コリアン高齢者トラヂの会の川崎市長宛声明文の「いつまでさべつされつづければいいのでしょう。~力をかしてください。」という言葉が心に響きました。同じ人間、平等であるはずなのにどうしてこういう差別がうまれるのでしょう。お互いを知り、違いを認め合うことが必要です。共に生きる、差別のない地域づくりをすすめていきます。