子供の育ちを社会全体で支える

2018年9月15日 11時12分 | カテゴリー: 活動報告

9月4日、新しい生き方・働き方研究会主催の「子供の育ちを社会全体で支える」連続講座が開催されました。

 『「なぜソーシャルワークが必要か」~保育・子育て支援施策に求められるもの~』と題して、日本福祉大学子ども発達学部教授 渡辺顕一郎さんを講師に学びました。

 人口減少社会を迎え、少子化の抑制だけでなく、現役世代の労働力を確保するためにも、家庭の子育てを支える観点からも、共働きを前提とする家庭像への転換が必要と言います。            また「子育ては家庭の責任」という視点から、「子育ては社会全体で担う」という視点への転換が必要だと言います。子育てを取りまく社会の様相は大きく変わっています。社会関係は希薄化し、地域で子育てを教えてくれる人がいない子育てになり、育児を母親が一身に背負い、とにかく子どもを守ろうとして子ども同士の関係に介入しすぎる「先回り育児」になったり、社会における母性・父性の希薄化が起こっています。

 子どもの育ちをめぐる福祉的課題としては、非正規雇用が増えていること、所得格差が広がり子どもの貧困率は13.9%、とりわけひとり親家庭の貧困率は50.8%にもなること、家庭の経済状況は子どもの教育に影響を与える要因となっていること、貧困は重篤な虐待につながるリスク要因であること、発達に課題を抱える子どもが増えていることなどが挙げられています。

 そこで「地域や社会全体で子育てを支える」支援が必要になります。保育所・子育て支援センター・児童館・学校など子育て家庭にとって身近な地域の中に存在する施設で子育て支援を推進することが求められています。児童虐待の予防の観点からも身近な地域の支援の展開が必要です。

 地域におけるソーシャルワークが必要になってきます。ソーシャルワークとは、人と環境との全体的な関係性に着目し、社会関係の調整や改善を図ったり、活用できる社会資源に結び付けて(あるいは不足する社会資源を開発して)、問題解決を助けることです。        地域におけるソーシャルワーク援助には、利用者支援事業として特定型(保育所などの特定の社会資源に関する相談・情報提供などの利用者支援)・基本型(利用者支援+関係機関の連絡調整、連携)・母子保健型(保健師などの専門職が全ての妊産婦等を対象に利用者支援と地域連携を共に実施する形態)があります。

 また平成28年の「児童福祉法等の一部を改正する法律」において、母子健康法の改正が行われ、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を提供する「子育て世代包括支援センター」を市区町村に設置することが努力義務とされました。この対象は一般的な子育て家庭です。いわゆる「心配な家庭」、要支援家庭は、市区町村子ども家庭総合支援拠点が支援します。この支援拠点の全国展開と、人材の専門性の向上により、子どものニーズに合ったソーシャルワークをできる体制を概ね5年以内に確保するとしています。そして要保護児童、要支援家庭(要介入)には児童相談所が中心的機関として支援する体制を取り、虐待の予防と早期支援を目指します。

 幼い命が奪われることのないように、痛ましい事件が起きないように、予防的支援をしながら社会全体で子育てを支える必要があります。 

 続いての第2講座では、講師にNPO法人子育て広場全国連絡協議会理事長、NPO法人びーのびーの代表の奥山千鶴子さんを迎え、『「多機能型地域子育て支援拠点の可能性を考える」~地域子育て支援拠点の質的向上と発展に資する実践と多機能化に関する調査研究をもとに~』と題してお話していただきました。 

 まずは日本の少子・高齢化の現状から。平成29年度年間出生数は94万6千人で過去最少、100万人を割るのは2年連続、平成28年度の子ども(0~14歳)は12.4%に対し、65歳以上は27.3%と高齢化が進んでいます。18歳未満の児童のいる世帯の割合は平成4年の36.4%から平成28年には23.4%に、子供の数も平成22年からは2人と1人が逆転し、子ども1人の世帯が最も多くなりました。

 「子ども・子育て支援制度」が平成27年にスタートし、多様な地域型保育がうまれました。保育所等を利用する児童数は年々増え、平成29年度には全体では42.4%、1・2歳児に限れば45.7%にもなります。小規模保育が増えています。 

 子育てのしやすさを諸外国と比較した調査では、自分の国は子どもを産み育てやすい国だと思うかという問いに、「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人の割合は、46.6%と日本は低く(スウェーデン97.9%、イギリス70.3%、フランス70.6%)、子育て全般の生活支援が必要だと言います。「小学校入学前の子供の育児における夫・妻の役割について」の性別役割分業観の比較では、「もっぱら妻が行う」「おもに妻が行うが夫も行う」を合わせると日本は63.5%と高く(スウェーデン5.3%、イギリス34%、フランス47.3%)、母親は子育てと仕事の両立に苦労しています。自分が育てられた環境の、子育ては主に母親が行うという母親規範から意識を変えていくにはまだ過渡期にあり、時間がかかりそうです。

 こうした中、就労家庭が利用できる、土日両日またはどちらかが開設している拠点、昼食が取れる拠点は利用後の効果が高く、地域子育て支援拠点で生まれる「つながり」は、親子が自己肯定感をはぐくみ家庭を超えた広がりを持ち、地域社会の一員として生涯にわたり安心と信頼に基づくあたたかい関係性の連鎖を自ら紡ぎ出す一歩であると言います。その地域子育て支援拠点が多機能化することで、拠点に来たついでに気軽に相談できたり、ファミリーサポートの登録ができたり、拠点で他の子供の預かりの様子を見て安心して預けられたり、複数の事業間で情報の共有やつなぎができてきめ細やかな支援が可能になります。 

 NPO法人びーのびーのが運営する地域子育て支援拠点事業「港北地域子育て支援拠点どろっぷ」はファミリー・サポート・センター事業と利用者支援事業を併せて実施しています。              親子の居場所である「ひろば=場」を持っていることは、多様な人との出会いや交流を生み出す財産です。知っている親がいる敷居が低い「安心できる場所」でファミリーサポート事業など、他の支援活動を見て知ることができます。複数の子育て支援事業がワンストップで行われることで、様々な支援事業を利用するために、親子連れで拠点以外の場所に出向いて登録などをする手間が省け、子育て親子の不便を解消できます。(拠点でファミリーサポート事業を実施してから登録数が20倍以上になったとのこと)妊娠期からの切れ目のない支援が効果をあげています。

 また、親が他の親に支えられることや、親子を他者とのかかわりの中で見ることで利用支援担当者が支援の手立てや方向性の検討が多方面からできるようになり、子育て支援の幅が広がる効果があったり、拠点でファミリーサポートを利用した親子が別の日に遊びに来た際に、ファミリーサポートの感想や意見を聞き取り利用方法などを改善できたり、下の子が拠点を利用した際に、上の子の相談に関わるケースに対応したり、学童・思春期まで見通せる場になりました。    多機能型支援の課題としては拠点内における多機能な取り組みにおける事業種を超えた情報共有・連携体制が求められること、他機関・施設との綿密な連携の必要性があること、多機能化に伴う業務の増加や人員不足、時間不足、専門的な支援を要する家庭への対応について研修の必要性が挙げられています。これには、予算の面で、連携加算や人員加算も必要になると仰います。 

 自分の育った市区町村以外で子育てする(アウェイ育児)の割合が多い都市での子育ては、身近な地域で子育てを支える仕組みがとても重要です。神奈川ネットではこれまで「子育て・介護は社会の仕事」と言い続けてきました。母親が一身に子育てを背負うのではなく、社会全体で支え、若い世代が子育てを楽しめる仕組みを提案していきます。