差別のない社会を―「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」運用の課題

10月12日、「川崎市反差別条例の運用の課題」として弁護士の師岡康子さんを講師とした学習会が開催されました。

「川崎市人権尊重のまちづくり条例」が7月に全面施行されました。しかし、進行中のヘイト街宣やヘイトクライム、ネット上のヘイトスピーチ問題に対して、条例の適切・十分な運用ができていない状況です。師岡さんは、川崎市は解釈を間違えている、表現の自由に偏って、慎重になっている、委縮していると話されました。

まず、条例における3段階の差別的言動(ヘイトスピーチ)の考え方を挙げられました。最広義としては、人種差別撤廃条約を踏まえた、「人権及び基本的自由を認識し、享有しまたは行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」として、人種差別をする目的がなくても結果として差別を生じさせるものも差別的言動であるということ。広義としては、ヘイトスピーチ解消法を踏まえ、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動。この意味は文字通り出て行けという言動に限定されず、多大な苦痛を強いて地域社会の共生に深刻な亀裂を生じさせるような、社会を分断させるようなことに向けられている言論として解釈すべきであるとされました。狭義には川崎市の条例の罰則付き禁止規定にある、公共の場所において、拡声器などを使用し、看板、プラカードその他これれに類するものを掲示し、またはビラ、パンフレットその他これらに類するものを配布することにより本邦外出身者に対する不当な差別的言動をすること。

川崎市はこの狭い解釈にとらわれている。刑罰が目的ではなく、差別的言動にあたるものは許さないと言っていかないと、それ以外は許されるという間違った解釈を与えてしまうことになり、今まさにそのような現状になりつつあります。

禁止規定、刑事規制についてはもちろん厳格に運用しなければなりませんが、川崎市はこれにとらわれて、硬直、委縮した運用になってしまっている、差別をなくすための条例なのだから、ヘイト街宣が罰則適用にならない場合でも差別的言動にあたる場合には、毅然として許さないという態度を示し、教育や啓発をしていく責務があると話されました。

また、膨大な事務量をこなすためには職員を増やす必要があります。何が差別なのか、何がヘイトスピーチなのか、基本的な知識を学習するためには市の職員の研修が欠かせないのに、まだしていないのは問題だとされました。

インターネット上の対策については、リストを提出した約300件について9件のみを審査会に諮問、今月これから答申を出すという審査会の進み方で、時間がかかりすぎています。ネット上の被害の救済にはもっとスピード感が必要です。削除されない間に次々にリツイートされ拡散されてしまいます。ネットモニタリング用のガイドラインの基準に該当するものは審査会を通さず、迅速にプロバイダーに削除要請する制度にすべきだと話されました。これには条例の改正は必要なく、解釈で可能とのことです。

ヘイト街宣は7月からすでに7回も繰り返し行われています。現実にありもしない「在日特権」、「生活保護優先受給」や意図的な虚偽の「野菜泥棒は外国人」などの言葉も差別的言動にあたります。こうした言動についても正していく必要があります。

条例はすぐれている、被害者の救済についても明文化しているのだから市は覚悟を決めて取り組んでいくべきだと師岡さんは話されました。市民社会の粘り強い取り組みでやっとできた条例ですが、条例ができただけでは差別はなくなりません。よりよい運用について私たちが声を上げていくことで、実効性を高めていく必要があります。誰もが人として尊重され差別のない社会になるように、これからも取り組んでいきます。