気候危機のリスク、私たちの未来のために今何をすべきか?

川崎生活クラブ生協主催のエコシティかわさきフェス2021に参加し、「気候危機のリスクと私たちの未来」というテーマでお話を伺いました。講師は国立環境研究所 地球システム領域 副領域長の江守正多さん。

1990年前後から世界平均気温は上昇し、ここ数年は真夏の猛暑で実感するほど温暖化してきています。この世界平均気温の上昇の主な原因は人間活動である可能性が極めて高い(95%以上)と言われています。(今年の8月にIPCCから新しい結論が出るそうです。)温暖化で異常気象が起きているのは西日本豪雨、2019年の台風15号、19号、熊本豪雨などでも明らかです。温暖化のリスクとして8つの主要リスクがIPCCから報告されています。

①海面上昇、沿岸での高潮被害②洪水による被害③極端な気象現象によるインフラ等の機能停止④熱波による特に都市部の脆弱な層における死亡や疾病⑤気温上昇や干ばつによる食料安全保障への脅威⑥水資源不足と農業生産減少による農村部の成形及び所得損失⑦沿岸海域における生計に重要な海洋生態系の損失⑧陸域及び内水生態系がもたらすサービスの損失

これには水害なら防災・減災の強化や熱中症にはエアコンや熱中症警報など適応策がとられ、国も気候変動適応法を施行し、適応計画を策定し、地方自治体では地域適応計画を立案することが努力義務とされています。

しかし、適応策ではどうにもならない「ティッピング要素」という概念を初めて知りました。外からゆっくり連続して起きる変化が、ある一定の臨界点を超えると元に戻せないような変化が起きることを、吊り下げられたバケツに水を注いでいくとある時点でバケツの水が一瞬にしてひっくり返る映像で分かりやすく説明されました。例えばグリーンランドの氷床の融解、アルプス氷河の消失、エルニーニョ現象の増大、アマゾン熱帯雨林立の立ち枯れ、南極氷床の不安定化などが、ドミノ倒しのように連鎖し、人間が温暖化ガスの排出をやめても次々と移行して地球温暖化が進んでいくのではないかという話を聞き、恐怖と今のままではいけないと強く感じました。

温暖化によって深刻な被害を受けるのは、発展途上国や将来世代で、原因に責任がないのに深刻な被害を受けることから不正義を質すということで気候正義と呼ばれているそうです。

2015年のパリ協定では「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5度に抑える努力を追求する」とし、「今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成する」(ネットゼロ)目標を立てています。

新型コロナ感染症拡大で世界のCO₂排出量は一時的に17%減少しましたが、今年度通しての減少は7%程度と言われており、これではほとんど気温の上昇を抑える効果はないそうです。

それでは私たちは脱炭素化に向けて何をすればいいのか。エネルギーの脱炭素化として、省エネ、再エネ、原子力(これは事故の懸念や核廃棄物などの課題がある)化石燃料+CCS/CCU(地中にCO₂を封じ込める、CO₂を製品に利用する)燃料の置き換え(電気・水素・バイオマスに置き換えCO₂を出さずに作る)、大気中のCO₂を吸収する方法としては植林、バイオマスエネルギー、直接空気回収+CCS/CCUがあげられます。しかし、「脱炭素化」はいやいや努力して達成できる目標ではなく、社会の大転換が起きる必要があると指摘されました。例えば身近に起きた大転換の事例として、たばこの「分煙革命」をあげられました。煙草はどこでも吸えていたのに、受動喫煙による健康被害の立証により、今や分煙は当たり前になっています。このように再生エネルギーにシフトしていくことが常識になる必要があると話されました。

再エネには、コスト低下や、系統接続、調整力の確保、乱開発の是正など課題もあるが、日本には洋上風力、太陽光など再エネポテンシャルは十分あると指摘されました。人類は「化石燃料文明」を今世紀中に卒業しようとしている。そうしなければパリ協定の目標は達成できません。

気候危機とコロナ禍に共通する背景として、人間活動による生態系への浸食、際限なく(物質的な)拡大を続ける人間活動、社会的な格差の再生産、不完全な国際協調をあげられ、これらの問題の「出口」が問われているとされました。

私たちは今何をなすべきか。次の世代に向けて気温上昇を抑えるために、今動き出さないと手遅れになります。原発はやめて、石炭火力発電も縮小していく。身近な所では、省エネに取り組む、再生エネルギーの電力会社に切り替える。子どもたちのために前向きに再生エネルギー推進を提案していきます。