子どもの育ちを支えるインクルーシブ教育~ 一人ひとりに合った教育支援を

少子化が進む中でも、特別支援学級や特別支援学校で学ぶ児童生徒は増えています。また、通常学級でも発達障害の可能性がある児童生徒も増加傾向にあります。

国連の勧告を受けて

障害者権利条約は、障害に基づくいかなる差別も禁止し、教育や労働などの社会的権利を保障しています。2006年に国連で採択され、日本は2014年に条約を批准しました。今回初めて障害者権利委員会の審査を受け、9月に勧告が発表されました。その中で、障害を持つ子どもたち向けの特別支援教育について、障害児を分離した特別支援教育はやめるべきとの勧告が出されました。すべての障害のある幼児児童生徒が、すべての段階において合理的配慮と、必要な支援を受けられることを保障するために、質の高いインクルーシブ教育の実現を求めています。勧告に拘束力はないものの、条約の批准国としてこの勧告は尊重されるべきものです。

この勧告を受けて、文部科学相は「特別支援教育を中止することは考えていない」との考えを示しました。特別支援教育はこれまでの実績や積み重ねがあり否定するものではありません。問題は障害があることを理由に子どもたちが特別支援教育を選ばされていることや、選ばざるを得ない状況に置かれていることだと考えます。通常学級で学びたいと希望した場合に就学を拒否しない、希望通りに学べる、合理的配慮を受けられることが必要です。

地域で差がある現状

川崎市では、2018年に重度の障害があり人工呼吸器を利用する児童が市立小学校への就学を求めたにもかかわらず、教育委員会は入学を許可しませんでした。学校教育法施行令は就学先の決定にあたり保護者の意見を聞くと定めています。しかし、教育委員会は「専門的な教育が必要」として県の特別支援学校への就学を通知しました。児童は地元の小学校に通うことができず、障害があっても幼稚園で一緒に過ごした友達と同じ小学校で学びたいとの希望はかなえられませんでした。結局家族は引っ越しを決断し、転居先では小学校の普通学級に通うことができました。

障害があってもどうすれば地域の子どもと一緒に学べるのか、この視点から教育委員会は十分な話し合いや合理的配慮をしたのでしょうか。地域により支援の差があるのが現状です。

合築で進むインクルーシブ教育

新潟県糸魚川市立糸魚川小学校と糸魚川市立ひすいの里総合学校は、普通校と特別支援学校の合築です。全国的にも珍しいこの取り組みを11月4日に視察してきました。ひすいの里総合学校は、糸魚川小学校の空き教室を利用して新潟県立高田特別支援学校ひすいの里分校として2005年に開校しました。築50年を超える校舎の建て替えに際して、市に支援学校が移管され、2校を合築して2014年に完成しました。子どもたちは同じ昇降口から登校し、木の温もりのある明るく開放的な校舎では児童や教職員の交流もしやすくなっています。大きな中庭では一緒に遊ぶことができます。ひすいの里総合学校という校名には、特別な支援をするのではなく、自立のための総合的な支援をするという思いが込められています。校長先生は一緒にいることが普通で当たり前だと話されました。学校にはいろんな子どもがいて当たり前、一緒にいることで互いが成長していく、これこそインクルーシブ教育です。

一人ひとりに合った教育支援を

障害の有無にかかわらず、子どもの可能性は無限です。障害があるからと言って、学びを制限するべきではなく、どうすれば共に学べるかを考え、環境を整えることが大事です。一人ひとりの教育的ニーズに合った支援ができる体制づくりには教職員の増員や専門性も必要です。また医療ケアが必要な子どもには学校にいる時だけでなく、通学時の看護師の配置も必要です。

2023年度から5年間の障害者政策の土台となる「第5次障害者基本計画」の取りまとめが現在行われています。原案では、障害の有無にかかわらず、可能な限り一緒に学べるようにする方針が示されています。

学校には多様な子どもがいることが当たり前です。引き続き適切な支援を提案し、インクルーシブ教育を推進していきます。